平成26年月報

うま



平成261月(22日記)

 
1月の受診の方は約1,010名でした。大過なく過ごせることに感謝します。お世話になったH病院のG会長が94歳で亡くなられました。高齢まで壮健でおられました。訃報に接した時、マーラーの歌詞が心に浮かびました。“Was entstanden ist, das muß vergehen. Was vergangen, auferstehen!”「 生じたものは去らねばならない、(しかし)去ったものは(やがて)復活する!」  心より哀惜の念に堪えません。暖かい光とさわやかな風と豊かな緑がいつまでも彼のものでありますように。そしていつか再会できますように。



平成262月(32日記)
 
2月の受診の方は約980名でした。寒さのため、例年のように高齢の方の受診が減少しました(今年は特に二回の積雪がありました)。2月堺市に2ヶ所、心療内科の新規開業がありました。これまで、(堺市では)医療機関の戦力が低下する一方だったので期待したいです。個人的には堺市より感謝状をいただきました。(10年以上、保健センターに出務したためです)

〇次回、診療報酬の改定ではまたも減収となります。睡眠剤、抗不安薬などを多種処方した場合に減額される由です。これは「腕の良い医師なら薬が少ないはずだ」ということを意味しています。この議論をさらに突きつめると、「うつ等 神経科疾患は病気ではない。気持ちを切りかえて気合で治せ!薬など毒だ。」という“一般人”の考えに至ると思います。私はこれには賛成できません。家族が“薬を飲まさなかった”会社が“服薬するなら、出勤は禁止と言われた”などのために不幸な経過をとったケースを幾度となく経験しています。神経科疾患は、決して「心の持ちよう」だけではありません。医学的な疾患(特に内因性精神病、高次脳機能障害、てんかんなど)は当然、服薬が必須です。また、心理的なものであっても希死念慮が強いケース、不安や興奮が著明のケースでは生物学的な手段(特に投薬)が必要です。

〇さらに向精神薬については大量服薬、処方薬依存症、裏取引(ネット上等)などの問題があります。そこで、@平成20年以前のように、特定の(問題性のある)睡眠剤、抗不安剤などを最長 7日や14日処方に指定する。(現在はほとんどが30日処方可) A現在どの医療機関でも受診者が他の所でどんな処方を受けているかは分かりません。そこで、医療費の請求書であるレセプトの集約される健康保険の支払者(健保組合や国保、生保など)がチェックして ある人がひと月の間にに複数の医療機関から多量の薬剤を入手しているようであれば、次の月はその人や医療機関に警告して処方させないようにするべきです。(近年、レセプトは電子ファイルで提出されているので その気になればチェック作業は簡単と思います。)
@Aの策が良いと思います。




平成26年3月(4月5日記)
 
3月の受診の方は約1,020名でした。消費税増税と診療報酬の改定でバタバタしています。未だ 決まっていないことが多く、10月まで経過措置の取られた項目も多数あり、役所にきいても分からず、五里霧中の状態です。「日本人は用意周到でキチンとした民族ではなかったのか?」と思います。このような所にも国の力の衰退を痛感します。これから先は人口も減り、人財も製造業も海外移転し、さらにはキチンと物事も決められず、日本は次第に世界で軽んじられることになるのでしょう。


すずらん

平成26年4月(5月2日記)
 4月の受診の方は約1,030名でした。現在、世界中に大事故や事件が頻発し、政治が行き詰り、戦争の危険性が高まっているように思います。今は技術が発達したので、だれでも全世界の人に一瞬で連絡がつき、個人でも世界中を相手に意見を述べたり、物品を売買したりすることができるようになっています。人財の採用についても企業や研究機関が世界的になるほど、才能に注目し、人種や国籍は関係ないと聞きます。真にオリジナルであれば、国境は無い時代です。情報も、物品も、人物も、資本も国境を越えて自由に迅速に往来しています。ただ、政治だけが旧態依然で、各国間で領土や民族めぐって、逆に憎悪が増しているように感じます。大惨事にならないか心配です。


平成26年5月(6月3日記)
 
5月の受診の方も約1,030名でした。心療内科の需要の多さを痛感します。逆に言うと、これまでは患者さんが心の不調を感じても治療を受けられず、放置されてきたことを示しています。個人的には、これまで大過のないことを感謝しています。すべて皆様のおかげです。一日も長く、健康でクリニックを続けたいと思います。私自身は何の力もありませんが、このような混乱した時代だからこそ、少しでも正気をはき、良心を全うしたいと思います。



平成26年6月(7月3日記)
 
6月の受診の方は約1,060名と開院以来最多でした。まもなく、開院満10年を迎えます。この10年の世の変化は激しく、特にITの発達は驚異的でした。神経症(ノイローゼ)のテーマや表現方法が“世につれ、人につれ”変遷しました。(失声症、多重人格、摂食障害、境界型人格障害、新型うつ病など次々出現)しかし、神経症発症のメカニズムはいつの世も変わらず、時代精神を反映し、その内容は時代を告発するものであると思います。さらに言えば、神経症とは異次元に幻覚妄想などをきたす正常心理の“了解”を越えた内因性精神病の諸群があります。内因性精神病は認知症や高次脳機能障害と同じく 生物学的に「疾病」であることが“推定”されており、医学的療法(薬物療法など)がほぼ必須です(極めて大雑把な表現ですが)。さらには最高次元の精神事象に人間の本態である“こころ”があります。この次元は永久に不可知の領域であり、“人間はなぜ生きるのか?”などの大問題は万古不変のもの(宗教や哲学など)が人間の規範と宇宙の在り方を示すものと確信します。自然科学(含精神医学、心理学)などが“エビデンス”で“解明”できるものではありません。
〇話は飛びますが、英米流の操作的診断基準(DSM、ICD)はこれらの異次元の精神の諸相(神経症―精神病―心的事象)を並列して記載していることがそもそも間違っています。(2次元の図形である“円”と3次元の物体である“球”をならべて比較しようとしているようなものです。)

ブーゲンビリア

平成26年7月(8月3日記)
 
7月の受診の方も約1,060名でした。心療内科のクリニックは増えても、病院が弱体化しているので、まだまだ、供給が需要に追いつかない状態かと思います。

 8月1日、
無事10周年を迎えました。あっという間でした。開業以来、無事健康で過ごせ、大きなトラブルもなかったことを幸いとします。すべて皆さまのおかげと心から感謝しております。私個人については27年1月、還暦を迎えます。一層 健康を大事にします。
 誠に僭越ながら、私なりに自分勝手に今後の世界を見通してみます。近未来は予測できない(個々の地震、テロ、事件など)が、遠い未来は予想がつくと言います。おこがましくも諸葛孔明が天下3分の計を論じた故事にならって、
(世界)、(日本)、(神経科医療)に分けて神経科の未来を考えてみました。

 「上」は世界全体です:世界総人口の増加と経済活動の拡大により環境破壊(特に温暖化)が起こり、食物、水が奪い合いとなるでしょう。産業活動に必要な化石資源(石油、ガスなど)も遅かれ早かれ涸渇ます。原発が廃止・削減されれば、一層拍車がかかります。人類の生活は確実に現在より厳しくなるでしょう。
 
「中」は日本の将来です:極度の少子高齢化が起こり、今でも国民一人あたり、1000万円を超える借金を抱えています。有能な人財、資金や工場も海外に逃げていきます。日本の没落は必至でしょう。最悪は国家経済の破綻です。
 
「下」は神経科医療の流れです:神経科疾患はほとんどが外来で治療できるようになってきました。敷居も低くなり、軽症の方も多数受診されるようになりました。外来受診者数はますます増加するでしょう。それと並行して病院(特に長期入院)から外来、さらには地域でのケアへと流れて行くでしょう。これは日本だけではなく、全世界的、歴史的な潮流です。入院患者さんの減少と外来(在宅)患者さんの増加は誰にも止められません。
 話が急に小さくなりますが、開業の10年をふりかえると、
「中」の日本没落の影響を「下」の神経科医療の潮流が代償してきました。即ち、「中」の影響で診察一回当たりの診療報酬が下がり続けましたが、その減少を「下」の流れによる受診患者の増加が代償してきました。しかし、この代償もここまででしょう。神経科経営はますます苦しくなると思います。
 更に「上」の影響もあって、これからは日常生活そのものも段々厳しくなるでしょう。あるいは「中」のため、しばらくすると、日本国家が体をなさなくなっているかもしれません。
 しかし、一方、(理論を越え、半ば感情的に)私は日本と日本人については楽観しています。日本人は有史以前から日本列島に住み、幾多の艱難をしのいで来たではありませんか。多くの戦乱があり、国家機構が崩壊しても、さらには戦災などで国土が焦土と化しても日本人はこの国土にあり、英傑を輩出して復活しました。今度の事態もやがては何らかの方法で克服してくれるものと確信します。(在日で日本を愛する方も同様)
 個人が時代の流れを変えることは不可能ですが、私としては神(特定の信仰をしているわけではありません)を信じ、人を敬い、名利を求めず、自分の頭で考えて、正気を貫いて生きていたいと思います。月並みですが、患者さんとの一期一会を大切にして自分のできる最善をつくします。





平成26年8月(9月3日記)
 8月の受診の方は約1,040名でした。クリニックから 300mの所に市立堺病院(堺市立総合医療センター)が建築中です。27年7月に竣工予定です。津久野駅近辺には病院目当ての調剤薬局やクリニックはもちろん、銀行の支店(ATMだけ?)、飲食、雑貨、衣服、自動車関連等々の進出がうわされています。大病院は現在の人気産業のようです。しかし、地理的にみれば、車で10分ほどの深井にはBL総合病院の巨大新館が最近完成し、そこからさらに10分ほどの泉ヶ丘にはK大学病院本院が5年後に着工されると聞きます。すでにある津久野駅の裏(徒歩圏内)にあるBB記念病院も合わせると、将来、近隣は総合病院だらけで、救急病院銀座になりそうです。



平成26年9月(10月3日記)
 9月の受診の方は約1,030名でした。いつものようですが、大過のないことを真に感謝します。10月から、抗不安薬、睡眠薬を多種処方すると、診療報酬が減額になりました。当院で多種服用されている方は長期通院の方がほとんどでした。そのため、あまり減薬はできませんでした。減収は仕方がありません。特に当院には私が阪南病院の勤務医時代から診ている、10年、20年継続の方がかなり居られます。その患者さんの一人と話をしたことなのですが、患者さんも“たくさんの薬は服用したくない”私も“たくさんの薬は処方したくない”。「眠られない」「イライラする」から仕方がなく、“服用している”、“処方している”のになんで「悪者扱い」になるのでしょうか?

紅葉

平成26年10月(11月6日記)
 10月の受診の方は約1,000名でした。10月28日から11月6日まで学会出張のあと、しばらくお休みをいただきました。皆様にご迷惑をおかけしました。おかげさまでリフレッシュできました。健康ライフさかい(堺市医師会の一般向け広報誌)の依頼で「認知症のおはなし」書きました。堺市には認知症疾患センターが2か所もあり、すぐれた臨床家や研究者もいます。みなさんお忙しいのでしょうか、私が書くことになりました。



平成26年11月(12月4日記)
 11月の受診の方は約1,020名でした。昨日(12月3日)、白内障(右)の手術を受けました。局所麻酔のため、術中から、視力が回復してくる自覚があり、治療効果を実感しました。このような効果を語源どおり“エビデンスがある”と言うのだと思いました。振り返ってみて、これほどエビデンスのある技術が心療内科にあるか思い当りません。人間の本態は身体ではなく、“心、精神”であり、治療効果を数量で判定できないことも自明の理ですが。。。


平成26年12月(1月4日記)
 12月の受診の方は約1,060名でした。例年にない寒さと悪天候のひと月でした。話が大きくなりますが、「軍備」と「経済」の分野の違いはありますが、現在の日本は戦前に類似しているのではないかと思い当りました。明治維新以来、日本は「軍備」の増強に努め、世界の五大国になりました。しかし、英米などの締め付け(大陸からの撤退要求や石油の禁輸など)により、“軍事的に暴発”し、世界中を相手に戦争して悲惨な結果になりました。戦後は経済発展に集中し、一時は世界2位の経済大国になりました。しかし、ここでもまた、欧米の規制、中韓印などの追い上げて「経済」的に行き詰ってきました。アベノミクスなどは追い詰められての“経済的な暴発”ではないかと危惧します。世界中をまきこんで大惨事にならなければ良いですが。。。





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