開業の動機
昭和54年以来、勤務医を続け、自分なりに臨床や医学研究に打ち込んできましたが、こころの医療は入院⇒外来⇒地域といった流れは世界的なものです。個人的な経験もあり、病院での治療には限界を感じました。特に高齢化社会においては、医師が病院に腰を据えて患者が来るのを待つ時代はおわりました。医師、治療者が地域の中で患者さんを支えて行くことが必須と考えました。
開業のメリット
開業してやはり患者さんとの距離が縮まりました。基本的に自分の時間で治療が決められるため、毎日のように診察に来てもらったり、勤務医時代と違い、身一つで気軽に気軽に往診に行けるようになりました。
開業の実感
1.開院
平成16年8月2日、とうとう開院にこぎつけました。正直に開業こんなに忙しいものとはおもいませんでした。初日は17人でしたが、とても疲れました。(勤務医のとき、外来日は60人くらい診る日もありました)診療はもちろんから経理、労務に至るまですべて自分の責任になるわけですから当然といえば当然なのですが・・ 準備期間中はいつも知らない人に会い、いつもと違う会話(価格の交渉や内装、備品、金融機関との交渉などなど)をするわけですから疲れます。病院での疲労とはちがう、重い疲れです。一番の励みは人間でした。もう数年会っていない人からエールが届いて交流が再開したり、それまでは全く知らなかった人と数ヶ月で数年来の友人のような関係になったり、それまで親しくなかった人と急に親しくなったり、患者さんからも色々アドバイスを受けました。電子カルテを予定していたのですが、ある患者さんから「パソコンの画面ばかり見てる医者はアカンで」と言われて中止したこともありました。神経科は、遠隔地、建物の上階、道路から通路を通るなど不便な所が多かったので、道路から直接入れる一階にこだわりました。開業を決めてからそれまでの何倍もの濃さで人生を送りました。改めて私は”人間をみることが好き”ということを実感しました。人間を観察して“飽きた”ということを知りません。人間はどの人も同じではありません。それぞれの価値観に従って持って人生を生きています。“人間はそれぞれが一つの小宇宙”であり、すべての人が自分の世界の“主人公”として懸命に生きています。
2.開院1ヶ月(9月2日)
開業1ヶ月が過ぎました。あっというまでした。患者さんとの距離が縮まり、上司のいない自由な生活を満喫していますが、未体験なことが多くハラハラドキドキすることもあります。一ヶ月で170人の患者さんが受診してくれました。勤務医の時は外来患者200人と入院患者60人前後を診ていたのからすると、効率が悪いですが、事務長や看護師さんの役割も兼任しているわけですから仕方がありません。すべてが自分にかかっていると実感し、あまり無理をしなくなりました。それにしても“プロのわざ”はすごいです。すでに開業している先生、医療経営ベテランの理事、保健センターや福祉事務所の皆様、病院の事務職員さん、看護師さん、設計士さん、施工業者さん、税理士さん、広告作成の人、印刷屋さん、家具屋さん、レセコンのインストラクター、レセプトを点検してもらった人等々、どの人もみな驚くべき技術や経験、知識を持っていて、私には全く思い及びもつかないことを提案、提供してくれました。開業は“人の輪”と思います。私にできことは限られています。これからもこれらの人々やクリニックのスタッフに感謝して進んで行くことになります。
3.開業2ヶ月(平成16年10月3日)
2ヶ月がすぎ、ようやくペースがつかめて来ました。開業してよかったと思えるようになってきました。患者さんは1ヶ月間200人に近くなりました。忙しさのなかに充実感が出てきました。患者さんやスタッフの皆さんに感謝するばかりです。自分にできることは本当に限られています。誠意を尽くすのみです。
4.開業3ヶ月(平成16年11月1日)
10月は約220人の患者さんが受診されました。やっと地域に根を張りだした感じです。やはり、自分にできることは限られたもので、たいした才能もないことを痛感しています。少しでも誰かの役に立てればと思います。皆さんに支えてもらって向上して行きたいと思います。3ヶ月間、大きな問題もなく、無事に過ごせたことを感謝します。
5.開業4ヶ月(平成16年12月1日)
11月は約230人でした。予想通り勤務医時代からの患者さんは次第に減少し、開業してから受診された患者さんが増加しています。11月は特にこのHPを見てこられた患者さんが目立ちました。縁のあった人を大切に思います。また、自分でも少し余裕ができたせいか、大阪国際会議場の
“もの忘れフォーラム”で無料相談のボランティアをしてきました。その参加者の多さに驚きました。いずれにしても4ヶ月間大過なく過ごせたことは誠にありがたく、これからも少しも気を抜かず、努力する覚悟です。
6.開業5ヶ月(平成16年12月31日)
12月28日で今年の診察を終えました。12月は約240人の受診者があり、カルテは330番を超えました。開業をするなど転機の一年でしたが、何とか乗り切れました。この数字がどのくらいのものか評価はかわかりませんが、17年は基盤固めの年になると思います。繰り返しになりますが、開業以来、大過のないことを感謝しています。17年も皆様に支えらながらしっかりとした医療を提供していきたいと思います。
7.開業6ヶ月(平成17年2月7日)
1月31日で開業ちょうど半年となりました。1月は250人を超える受診者がありました。最近、クリニックに帰ってくると、「ほっと」していることに気づきます。ようやく自分の落ちつける居場所になってきた実感があります。20年来の患者さん(こうなれば親戚のような感じ)から「先生、このごろええ顔(良い表情)になったで」といわれ、単純に喜んでいます。“鶏口たるとも牛後たるなかれ”と言ったところでしょうか。
8.開業7ヶ月(平成17年3月8日)
2月は約260人の受診者がありました。この5ヶ月間、大体10人づつ患者さんが増えています。まだまだですが、着実な歩みを続けているとおもいます。決して急がず、じっくりと構えて、気を引き締めます。4月から堺市の保健センターに出張する日を増やし、(火曜午後月3回)、地域に貢献します。
9.開業8ヶ月(平成17年4月4日)
3月の受診者は約280人でした。各家に配布されはじめた電話帳の広告の効果と思います。今月より堺市の医師会に入会しました(当サイトより早速リンクをはりました)。神経科医療事務のベテランの女性を初の常勤職員としました。通院公費負担、手帳、年金診断書など万全となりました。新年度にあたり、心機一転します。
10.開業9ヶ月(平成17年5月3日)
4月の受診者は約330人と急伸しました。地域に評価されてきたと思いたい所ですが、電話帳広告と医師会入会が大きかったようです。私自身では9ヶ月間トラブルなく過ごせたことの方がむしろうれしく思います。“一期一会”を大切にし、気のゆるみからJRのような事故を起こさないよう自戒します。
11.開業10ヶ月(平成17年6月4日)
5月の受診者は約330人で4月とほぼ同じでした。(厳密には微増)4月に急伸したのが一息ついたこと、および連休があり診察日数が少なかったことも影響していると思います。私としては飛躍的な伸びより着実な進歩を望みます。今月は老年学会に行ってきます。浦島太郎”のような感じですが、医学研究の世界にひたって来ます。(6月16日午前休診)
12.開業11ヶ月(平成17年7月4日)
. 6月の受診者は約340人でした。開業月が170人ですのでちょうど倍増しました。今月末で一周年を迎えます。やはり、一番うれしいことは大きなトラブルなく1年間を過ごせたことです。今後の展開を考える時期でもあり、マンネリ化しないよう思いを新たにしたいと思います。